正史「三国志」の小説ってないの?2019年連載開始!【対談】

①史上初!正史「三国志」小説公開の理由とは?

軍神・関羽

日時計

長年、正史「三国志」の漫画を描きたかったんですが、なかなか難しくて・・・。

そうしたら一通のメールが届いて、正史三国志」のネタを提供してくれるというんです。

河合統金

『魏武回想三国志―劉備、孫権ら動乱の時代を曹操自らが語る―』という小説は、私の2作目になります。

このたび、日時計さんがぜひ漫画にしたい、ということでネタを公開する次第です。

2020年の明智光秀NHK大河ドラマに合わせて、ネタを一気に公開したいと思っています。

史上初の黒人アフロサムライ、織田信長家臣「弥助」のハリウッド映画も発表されましたね・・・

日時計

河合さん、その2つは正史「三国志」とは関係ないですよ。

なぜ、正史「三国志」の漫画・小説を公開したいと思ったんですか?

河合統金

正史「三国志」寄りの、もっと面白いストーリーの漫画や小説があってもいいと思ったんです。もっと具体的なね・・・

②具体的な正史「三国志」の漫画・小説って何?

三国志の漫画連載予定!

日時計

「具体的な」って、どういうことですか?

河合統金

私が、陳寿著の正史「三国志」魏書やその解説を中心にした正史に興味を持ったのは、陳舜臣著の『曹操―魏の曹一族』を読んで、吉川英治・横山光輝著の「三国志演義」と内容がかなり違うと知ってからです。

陳舜臣の『曹操』は正史「三国志」寄りの内容になっています。

漫画では『蒼天航路』が曹操を主人公にしていますが、残念ながら、内容は正史「三国志」寄りではないですね。曹操も長身ですし。

日時計

今回の漫画・小説の主人公となる曹操は、「三国志演義」やゲームでも、悪役で、極悪非道、ダークな人物だと思われていますよね?

河合統金


曹操がダークな、残虐行為を行っているのは史実ですが、それには、様々な、乱世の時代の事情があるわけですよ。

私の1作目でも乱世の事情については詳しく書いていますが、なぜそういうことをしたのか、どういう状況だったのか、理由をできるだけ解説したいと思っています。

③正史「三国志」のエピソードも様々

三国志史上有名な名言?

河合統金

曹操の名言として有名な「私が人を裏切ったとしても、人には私を裏切らせないぞ」というのも、羅貫中著の『三国志演義』で呂伯奢一家殺害エピソードでの名言として書かれ、有名になりました。

「曹操が旧知の呂伯奢の家族を殺したとしても、人には曹操を裏切ることができないようにしてやる」という、悪人の名言になってしまっています。

しかし、実は、この、“いまいち意味がよくわからない”名言の出所である、孫盛の著書は、史料そのものがそもそも信用できないと、正史「三国志」魏書の解説者である裴松之は書いています。

日時計

このエピソードは、曹操の疑心暗鬼を表すエピソードですよね?

この名言は、『三国志英傑伝 関羽』や私の好きな趙雲子龍が主人公の映画『三国志』(アンディ・ラウ主演)でももちろん出てきますが、もしかして、曹操が言った言葉じゃなかったりするんですか?

河合統金

曹操は、こういう、きちんとした理屈のない、意味不明なことは公言しないタイプです。

実は、呂伯奢一家殺害エピソードは、正史「三国志」の中でも、3つの説に分かれています。

この発言は、孫盛著の『雑記』のみに書かれています。
ほかの2説には書かれていません。

孫盛は、『雑記』のほか、『魏氏春秋』という著書でも、魏を悪者にして蜀を持ち上げ、おすすめしたいようで、あらぬ噂話が曹操の発言として記載されています。

正史「三国志」のエピソードの中でも、真相に近いほうを私の小説では書いていきたいと思っています。

④曹操の武力は「三国志」最強なのか?

三国志最強の武力の武将とは!?

日時計

以前から、ダークなストーリーの漫画を描きたいと思っていて、河合さんの小説、『魏武回想三国志―劉備、孫権ら動乱の時代を曹操自らが語る―』でも残虐な殺人シーンなど、人間の黒い闇の部分についても書くそうですが。

河合統金

正史「三国志」の時代は、人間の残虐性が極度に発揮された乱世のひとつで、平民でも殺人と無関係には生きられません。

死ぬのは当たり前で、「どう殺すか」・「どう死ぬか」というのがネタになります。

曹操は、「孫子の兵法」などの兵術に精通した戦上手として知られています。

曹操の武力が最強なのは、曹操自身が腕力もある優れた兵士であったことと、兵法・兵術が曹操自身の経験として完全に身に付いているからです。

正史・三国志史上最強軍師は諸葛孔明?

正史・三国志史上最強軍師は?

日時計

曹操は、最強の武将でもあったんですか・・・。

私としては、曹操には関羽や張飛、呂布のような、矛や槍で戦うイメージがあまりないんですが、官渡の戦いなどでは自ら先頭に立って攻撃していますね。

ところで、最強の軍師と言えば、やはり諸葛亮孔明ですよね?

正史「三国志」で陳寿らに、「臨機応変な軍略が不得意」などと言われていますが、最強国の魏の司馬懿仲達と互角に戦っています。

河合統金

孔明は確かに名軍師です。古典に精通し、分をわきまえた人物です。孔明が書いた有名な「出師の表」は、皇帝劉禅に対する遺書でしょう。

「死を覚悟で最強国の魏へ攻め込む一方で、恩義ある先帝劉備との離別に涙しています」と書かれています。

蜀の民衆も感動したでしょう。

まさに軍師ですね・・・

孔明が民衆に慕われていたのは確かだと思いますが、これも兵法の計算の内なんです。

この小説・漫画では、孔明については、いかに兵法に精通していたかを書いていくつもりです。

⑥正史「三国志」をどう漫画にするの?

正史・三国志の漫画化計画

日時計

正史「三国志」寄りの漫画を描くといっても、どうしても、史書に書かれていないことは、創作しなければいけないじゃないですか。

創作してしまうと、それは正史「三国志」とは言えないのではないかとの思いがずっとありました。

そこはどう思いますか?

河合統金

日時計さんがこだわっている部分について、そこを河合統金独自の特殊能力で具体的に書いていきたいと思っています。

私の場合、創作をまったくしていないわけではありませんが、私が“見ている”ネタは山のようにあって、生きているうちに書ききれないほどです。

曹操の鉄びさしの兜、金貴石象嵌の立て襟、皮革のマントを第一巻に掲載しました。

関羽・張飛・趙雲・諸葛亮孔明・呂布らも含めた兵術、武器の使い方や、曹操の五色棒、五色冠、銅雀台などなど他は続巻にて、ほかにも、再建計画が本格化している信長の安土城の詳細や、捜索中の「安土城図屏風」に描かれていた内容も、次作以降、徐々に公開予定です。

日時計

ずっと、正史「三国志」を描きたいと思ってきました。

今回、河合統金さんと合作という形で正史「三国志」を描けることになりました。

漫画では、世界にひとつだけの、オリジナリティのある、自分の中の正史「三国志」を描ければ、と思っています。

⑦正史「三国志」の流れ解説(群雄割拠)

正史・三国志の漫画の流れは?

日時計

この漫画・小説は、魏の曹操を3歳から最期まで描く長編となりますが、蜀の劉備と呉の孫権についてはどうなりますか?

河合統金

【民衆は官僚の賄賂政治に苦しんでいた】後漢朝では西暦88年ごろから皇帝の権力が弱まり、皇帝の身近にいて相談相手となっていた外戚や宦官が権力を持つようになりました。

外戚、宦官を問わずこの時期の政治は極端な賄賂政治であり、官僚たちはみな賄賂を贈らなければなりませんでした。

その賄賂の出所は民衆からの搾取だったため、民衆の生活は苦しくなる一方でした。

184年には黄巾の乱という宗教を掲げた民衆反乱が起き、全国に反乱が飛び火したんです。

【地方の武将たちが政治に参加していった】
反乱を鎮圧するために外戚・宦官は軍隊を持つ武将たちに協力を要請しました。

一方で、外戚と宦官の対立も悪化し混乱する中、189年に呼び寄せられた董卓が首都洛陽を制圧し皇帝の少帝弁を廃位し、献帝を擁立すると、後漢は事実上、統治機能を失いました。本格的な乱世に突入し、全国各地で、群雄が割拠するようになったわけです。

劉備や孫権たちも、その中で頭角を現した武将で、それぞれ徐々に勢力を拡大していきます。

⑧正史「三国志」の流れ解説(三国対立)

正史・三国志の三国対立の流れ

日時計

そもそも、なんで曹操と劉備と孫権は三国で対立したんですか?

河合統金

【曹操は後漢朝の政治を担った】
曹操は袁紹たちと協力して戦乱を収めようとする中、人材や兵力を得ていき、部下の参謀たちからの進言で、196年に献帝を庇護し、献帝は曹操を大将軍とし、洛陽から許に遷都しました。

これ以降、曹操は漢室の庇護者として後漢朝の政治を担います。

だから、劉備も孫権も、曹操に何の不満も無ければ、曹操とわざわざ対立しなかったでしょう。

【劉備と孫権は独自の政治を行った】
全国各地で、群雄が割拠する中、劉備と孫権は一定の地域を統治し、大きな勢力を持つようになりました。

孔明が劉備の軍師となり、劉備に天下三分の計を進言したのはまさに「先見の明」ですね。

劉備と孫権は、その一定の地域の武将たちや民衆の支持を得ることができたので、曹操に対抗することができるようになりました。

2019年連載開始の小説・漫画『魏武回想三国志―劉備、孫権ら動乱の時代を曹操自らが語る―』では、曹操・劉備・孫権らが、どういう状況で、なぜそういうことをしたのか、様々な、乱世の時代の事情をできるだけ解説していきたいと思っています。

日時計

現在やりたいことが多すぎて時間に忙殺されていることもありまして…公開は年一くらいになりそうなのですが…漫画版は無料公開ですので、是非読んでください。

日時計&河合統金

長期にはなりますが、興味のあるかたはぜひご覧ください!

河合統金の三国志小説はこちらで購入できます。

河合統金プロフィール

『革命者でいること 前編―信長像に影響を与えたネット小説(2003年公開)―』作者。

織田信長のアニメを見た知人から「似ている」と言われた1作目に特別編を追加。

2019年『魏武回想三国志(一)/曹操漢詩完訳―劉備、孫権ら動乱の時代を曹操自らが語る―』刊行、連載開始。2020年『信長自身による戦の解説(イラスト付き)』刊行予定。

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